ザ・ゲイサーズ地熱発電所 |
1989年からザ・ゲイサーズでの地熱発電事業に参入、現在では72,5000世帯を賄うことが可能な725メガワットを発電するに至っています。
1800年代の中頃、ちょうどゴールドラッシュの頃からこの地域での熱水現象が確認されていますが、最初の本格的な開発は1860年代から80年代にかけての観光事業で、1957年にはザ・ゲイサーズ・ホテル (The Geysers Hotel) が建てられ観光名所となっていきました。
1923年、ジョン・グラント (John C. Grant) が地中から吹き出る高圧蒸気を利用した発電を考案、小さな発電小屋で35キロワットの発電に成功したのを機に、小規模な地熱発電事業が盛んになっていきます。しかし、1930年代に入ると安価な原油による火力発電と競合できなくなっていきました。
一方、観光産業は1957年に建てられたザ・ゲイサーズ・リゾート・ホテル (The Geysers Resort Hotel) が1978年に火事で消失するまで続いていきます。
ザ・ゲイサーズの蒸気田 |
1960年、ザ・ゲイサーズ (The Geysers) おける本格的な商業ベースの地熱発電所がパシフィック・エレクトリック・ガス社 (Pacific Electoric & Gas〜通称 PG & E) によって稼働、11メガワットを発電して以来1986年にはノーザン・カリフォルニア・パワー・エージェンシー社(Northern California Power Agency〜通称 NCPA) も参入し合計2,043メガワットを供給できるようになっていきました。
ところが1989年、何基もの発電所による高圧蒸気の過剰消費により地下水と蒸気圧が極端に減少していくという事態に陥ってしまいました。大手2社が撤退を余儀なくされる中、カルパイン社はある奇策を持って参入します。
発電余剰水の還元や雨水だけでは賄えない地下水を、パイプラインを利用し周辺都市の処理済み下水を引き込み、地中深く注入して地下水と蒸気を安定供給するというもので、現在ソノマ地域から46km・クリアレイク地域から64kmのパイプラインにより3,420万リットル、サンタローザ地域から67kmのパイプラインを利用して4,180万リットル、合計7,600万リットルの再生利用水を確保しています。
それではザ・ゲイサーズにおける地熱発電のメカニズムを説明しましょう。
地熱発電のメカニズム |
スティームウェルズ |
発電タービン |
蒸気は全長128kmのパイプラインを利用して最寄りの発電施設 (敷地内に14軒ある) に運ばれます。
この高圧蒸気を利用してタービンを回し発電する訳です。使用済みの蒸気はコンデンサー (Condenser・復水器) とクーリングタワー (Cooling Tower・冷却塔) に送られ、冷やして水に戻した後に全長128kmのパイプラインを利用して56基の注入井戸・インジェクションウェルズ (Injection Wells) から地中深くに還元するというのがザ・ゲイサーズでの基本的な発電行程になります。
クーリングタワー |
また、ある程度の蒸気は気化してしまいますので、利用した蒸気の全てを水として再び地中に戻すことはできません。
H2S処理装置 |
日本は世界有数の火山地帯で、現在国内に17ヶ所の地熱発電所がありますが、1999年開業の八丈島を最後に新たな建設は進んでいません。温泉産業がその足を引っ張っているとも言われています。
しかし近年、温泉から湧き出る熱湯を利用し、フロンのような水より低沸点の熱触媒を熱水で気化させてタービンを回す地熱バイナリー発電が見直されています。
発電に使ったお湯を温泉に引き込むことでウイン・ウインの関係を作り上げ地域の活性化を目指そうというわけです。