ホワイトポケット(White Pocket)
アメリカ西部にも秘境と呼ばれている地域がまだまだありますが、そのひとつがバーミリオンクリフス国立モニュメント (Vermillion Cliffs National Monument)。
アリゾナ州北部、ちょうどグランドサークルのほぼ真ん中に位置し、北側にパライア渓谷 (Paria Canyon)、東側から南側にかけてバーミリオンクリフスの絶壁、西側にコヨーテ・ビュート群 (Coyote Buttes)、そして中央部にパライア平原 (Paria Plateau)を有する面積1,189㎢の未開の地です。
*National Monumentは日本でいわれる国定公園ではなく国立モニュメントと訳します
ホワイトポケット |
しかしながら、国立モニュメント内の道路は未舗装のうえ、その殆どがデコボコの悪路、車高の高い四輪駆動車以外でのアクセスは困難です。
ちなみに国内の国立モニュメントは、国立公園と同じアメリカ合衆国連邦政府内にある内務省国立公園局の管轄でありながら、運営管理を同局が担っているとは限りません。
ここバーミリオンクリフスを運営管理しているのはBLM (Bureau of Land Management・連邦土地管理局)という別組織、あえて訪問者数を極端に制限することにより自然保護と保全を実現しています。従って雨が降るとデコボコで細い未舗装道は泥と深い水溜りでぬかるみ、道路標識や案内板も最小限、一般車でのアプローチが難しいことに加え (ほぼ不可能)、公衆トイレが一切設けられていません。ゴミや排泄物は全て持ち帰らなければならないのです。
もうひとつ、バーミリオンクリフス国立モニュメントで1番人気のザ・ウエーブ(The Wave)を擁するノース・コヨーテ・ビュート(North Coyote Butte)と2番人気のサウス・コヨーテ・ビュート(South Coyote Butte)を訪れるには許可証が必要で、それぞれ毎日20名づつにしか発行されません。このうち各10名づつは4ヶ月前からインターネットで申し込む事ができ、抽選結果はメールで通知されます。残りの10名づつはBLM事務所で前日に行われる抽選によって選ばれるという仕組みで、当選者は料金を支払い翌日の許可証を手にすることができるのです。
特にノース・コヨーテ・ビュートの許可証の抽選は非常に競争率が高く、オフシーズンで80倍、ピーク時ですと100倍以上の倍率とのこと、よほどの幸運に恵まれない限りほとんど入手は困難でしょう。
更にザ・ウエーブまでは、1時間半以上も四駆車で悪路を走るうえ、トレイルヘッドの駐車場から乾いた川底や岩場といった手付かずのバックカントリーを炎天下の中片道2時間以上も歩かないとたどり着けません。日陰は無くかなり足場の悪い道のりとなる訳です。
運良く許可証を入手することができても、悪路の運転や奥地までの過酷なトレッキングを個人で敢行するのはかなりのハイリスク、BLM公認ガイドの同伴をお勧めします。
*車両を持っているBLM公認ガイドも多く、彼らの許可証は不要
*1名のBLM公認ガイドで最高5名までの訪問者を案内できる規則となっている
ジャコブ・レイク・イン |
今回はカナブ(Kanab)という町からBLM公認ガイドと共に南からアプローチする一般的なコースをご紹介しましょう。
クリフ西壁とカリフォルニア・コンドル放鳥の場所 |
国立モニュメントの看板 |
出発から約2時間半〜3時間でホワイトポケットの駐車場に到着、もちろん公衆トイレはおろかゴミ箱すらありません。前述のようにゴミや排泄物は持ち帰るのが規則、でもこの駐車場だけは、こっそりと木陰や岩陰で用を足してもガイドも大目に見てくれます。・・・がやはり規則は規則、携帯トイレ袋を持参することをお勧めします。駐車場からも見えますが、砂地を5分歩くだけでホワイトポケットの奇岩群です。
ブレイン・ロック |
2000年11月、クリントン大統領がこの地を国立モニュメントに指定、BLMの管理下に置きました。
ザ・ウエーブには波状のフォーメーションが、そしてここホワイトポケットにはブロッコリーの頭のようなブレインロック(Brain Rock)をはじめ、渦巻き状の奇妙な地層までバラエティーに飛んだ地形が展開しています。遊歩道は無く足場の悪い所も多いので要注意ですが、ゆっくり歩いても1時間半から2時間もあればひと回りです。
帰路は悪路を揺られながら同じルートをたどり戻りますが、「カリフォルニア・コンドル放鳥の場所」でトイレ・ストップを取っても良いかもしれません。最後にジャコブ・レイク・インで休憩し夕刻カナブに帰着です。天気やロードコンディションにもよりますが、全体で7〜8時間の行程です。