1/12/2014

化石の森国立公園 (Petrified Forest National Park)

化石の森国立公園 (Petrified Forest National Park) はグランドキャニオン国立公園の1/5ほど、小さめの国立公園です。アリゾナ州フラッグスタッフ (Flagstaff) から40号線を東へ約2時間という距離、大きな丸太の化石がごろごろと転がっているユニークな国立公園ですが一般にはあまり知られていません。
化石の森国立公園の珪化木

およそ2億2,500万年前、このあたり一帯は森林に覆われ、多くの木々が茂り大きな川が流れる豊かな地域であったと推測されてます。
川の上流の山岳地帯には火山があり、大量の火山灰土が堆積していました。
頻繁に起こる嵐で倒れた木々が洪水により下流にあたるこの場所に運ばれ、火山灰を含む泥土や土砂に埋もれていきます。
このような現象が繰り返され、押し流された木々と土砂が数百メートルの深さに堆積していきました。
一般的に埋もれた木々はこの段階で腐敗してしまいます。しかしながら泥土が完全に空気を遮断してしまったため、酸化現象や腐敗から守られました。
そしてこの泥の中に含まれる火山灰中のケイ素と水との化合物〜ケイ酸が木の中に浸透、木の細胞と化学反応を起こしてゆっくりと結晶となっていきます。木は徐々に二酸化ケイ素つまりシリカ(Silica)という物質に変化し珪化木 (けいかぼく) となったのです。
このシリカは二酸化シリコン (Silicon Dioxide) とも呼ばれています。
その後、地殻の変動や浸食が繰り返され、化石となった木々が地表に現れたのが「化石の森国立公園」の風景です。
クリスタル・フォーレスト

多くの丸太は輪切り状になっています。
地殻変動の際の圧力により石化した木にひびが入り、そこから割れていきました。
切り口に見られる石化物質の色の違いは、珪化木になった後にさらなる水との化学反応で様々な石に姿を変えたもの。
地下水に含まれる成分の違いにより様々な「宝石」に姿を変えたものも見られます。
メノウ/オニキス/アメジストなどが断面に輝く丸太が転がっているのです。

1906年に国定公園に指定されたにも関わらず、20世紀初頭には大量の珪化木がここから持ち去られてしまいました。
公園内にはダイナマイトで爆破採集した跡も残っています。
1962年に国立公園に昇格してからは出入り口でのチェックはもちろんのこと、園内での監視体制が強化されており、珪化木のかけらを採集すると$400ほどの罰金を課せられますので要注意。(盗難を防ぐため、夜間は鉄のゲートが閉まり入園禁止になります)
クリスタル・フォーレスト(Crystal Forest) には約1.2kmのトレイルがあり、見渡す限り珪化木の丸太が転がっています。
ブルーメサの地層
園内にあるブルーメサ (Blue Mesa) では火山灰・砂岩・粘度などのカラフルな地層を展望することができます。恐竜が登場する前の三畳紀の地層ですが、ここでは化石の発掘作業が進められています。
出土する爬虫類の化石から恐竜への進化の秘密を探ろうという調査研究だそうです。



1/04/2014

世界最古の木・ブリッスルコーン・パイン (Bristlecone Pine)

世界で最も長命の樹木とされているのは、ブリッスルコーン・パイン (Bristlecone Pine/日本名・イガゴヨウ松) という標高1,700mから3,400mあたりに生息する松の一種です。
松かさにトゲ (Bristle) が生えているのでこう呼ばれています。   

樹齢4,700年を超える世界最長寿の木は、シェラネバダ山脈の東方にあるホワイト・マウンテン (White Mountain/標高約4,300m) の山麓に広がるインヨー国有林 (Inyo National Forest) の標高3,300mの森林限界地帯に位置する「古代ブリッスルコーン・パインの森」(Ancient Bristlecone Pine Forest) に立っています。
ブリッスルコーン・パイン
この木はメトセラ (Methuselah) またはメッセラーと名付けられており、1957年の発見時で樹齢4,789年ということですので、2014年で計算すると樹齢4,845年ということになります。
また古代ブリッスルコーン・パインの森は、メトセラの発見者にちなんでシュルマン・グローブ (Schulman Grove)と呼ばれています。
樹木年代学 (Dendrochronology) の権威でアリゾナ大学教授エドムンド・シュルマン博士 (Dr. Edmund Schulman) です。
 当時の彼の計測は、細い円筒形ドリルで幹から年輪の標本を採取、その年輪を実測した結果から樹齢を割り出した正確なものでした。なんと1インチ (約2.5cm) の幅に約100本の年輪があったそうです。調査後、取り出されたサンプルは元の穴に戻されました。
それまで用いられてきたカーボン14 (C-14) 測定よりも、より正確な樹齢が判った訳です。
ちなみに、屋久島の縄文杉は一般的に推定樹齢7,200年と言われていますが、学術的な推定樹齢は最高でも4,200年程とのこと。(せいぜい2千数百年という説もあります)
幹から年輪標本を採取すればいったい何歳なのかすぐに分かるのですが・・・
実は、観測史上最古の木はプロメテウス (Prometheus) と名付けられ、ネバダ州のグレートベイスン国立公園 (Great Basin National Park) に立っていました。
ところが地質学調査のため、大学院生と森林警備員が1964年に誤って切り倒してしまいました。伐採後に年輪を数えてみると樹齢4,844年だったことが判明したそうです。
ブリッスルコーン・パイン/デッドツリー

標高3,000m以上での強い紫外線、時には風速90mを超える強風、マイナス30℃/積雪3mを超える冬、半年におよぶ乾期といった決して生物の生息には適さない過酷な環境に耐えながら、ブリッスルーコーン・パインは極限状態の中をゆっくりと生き続けています。
樹皮が無くなってしまったのは強風のため、幹にねじれが生じるのは、日向と日陰で細胞の成長速度が異なるためと言われています。

シュルマン・グローブ (Schulman Grove) では、デッドツリー (Dead Tree/枯れてはいるが立っている木) でも枯れてから数百年は立ち続けていますし、デッドウッド (Dead Wood/枯れて倒れてしまった木) の中には4,900年も生きたものもあります。
多くの古木は北側斜面に見られます。長い乾期を乗り切るため、少しでも遅くまで雪が残る北側でその雪解け水を吸い上げて生きて来たという証でしょう。
森にある2つのトレイルをご紹介します。
ディスカバリー・トレイル (Discovery Trail/約1.6km) はシュルマン博士が最初に樹齢4,000年以上の木を発見したところ、そしてメトセラ・トレイル (Methuselah Trail/約7.2km) を歩くと世界最長寿の木・メトセラがあるというのですが、いったいどの木なのか分かりません。全ての木には番号が付いていますが名札はありません。
ディスカバリー・トレイルの古木
ビジターセンターのレインジャー (森林管理官) に訊ねると、樹齢4,000年以上の木々が群生している地域だけを教えてもらえます。
メトセラがゆっくりと今でも生きている場所は保護のため「あえて」伏せてあるのです。

シュルマン・グローブへは、シェラネバダ山脈の東側を南北に走る395号線にあるビッグパイン (Big Pine) という町から168号線に入り、ホワイト・マウンテン・ロード (White Mountain Rd./冬期閉鎖) を左折、入り口ゲートを通過しながらどんどんと上がっていくと約45分ほどでビジターセンターに到着します。駐車場がありますが道中の山道も含め大型バスの乗り入れはできません。
 
*メトセラとは旧約聖書の中で最も長寿だった人物、ノア (ノアの箱船) の祖父でなんと969歳まで生きたと言われている。




                                   ブリッスルコーン・パインの松かさとメトセラ・トレイルの古木 


余談ですが、カリフォルニア州には他にもセコイア&キングスキャニオン国立公園(Sequoia & Kings Canyon National Park) に世界最大の体積の木 ・シャーマン将軍の木 (General Sherman Tree/樹種〜ジャイアント・セコイア/推定重量2,000トン) や、レッドウッド国立公園 (Redwood National Park) に世界で最も背の高い木・ヒュペリオン (Hyperion/樹種〜コースタル・レッドウッド/高さ115.72m) も立っているんです。
3大世界一の木々をまとめてお楽しみいただけます。