8/19/2014

グランドティトン国立公園 (Grand Teton National Park) その①

映画「シェーン」のお話し


イエローストーン国立公園 (Yellowstone National Park)の南に隣接するグランドティトン国立公園は、ティトン山脈とそれを移すジャクソン・レイクとが美しい公園として知られています。
山脈の東側に広がるジャクソン・ホール (Jackson Hole)と呼ばれている平野盆地には、西部開拓時代から多くの入植者達が定住し牧場などが営まれています。
ティトン山脈とジャクソン・レイク
1929年に国立公園になるまでには地元住民や連邦政府、州政府や地方自治体などが繰り広げた長い争議の歴史がありましたが、今回はこの地を舞台に作られた名作映画「シェーン (Shane)」(1953年公開)のお話です。

この映画の中に描かれているものは、西部開拓者の中にあった旧勢力と新興開拓者との衝突、そして貧しい開拓者家族とシェーンとの人間模様でした。
流れ者ガンマンとして生きてきたシェーンがまっとうな人生を歩もうとしたのも束の間、新興開拓者達の為に再び拳銃を握り戦わざるを得なくなる。
ガンマンとしてまた多くの血を流してしまったシェーンはこの地を去って行きます。

さてこの映画に登場するライカー (Ryker)という地元の実力者とその一党。彼らは1840〜50年代にかけてこの地に入り、先住民と戦い、荒れ地を開墾していったいわば先駆者達です。西部開拓者達の旧勢力と言えましょう。
自らの血と汗で手に入れた土地は自らの物、どこに登記するまでもなく自称「私有地」という訳です。

1862年、当時の大統領リンカーンと連邦政府議会は、国民機会平等と西部開拓を目的に「ホームステッド法 (Homestead Act)」という法律を制定します。
これは、21歳以上または家長であること/土地登記料$18を支払うこと/その土地を最低5年間開墾し農業を営むことを条件に65ヘクタールの国有地を無償もしくは格安で払い下げるというものでした。
多くの新興西部開拓者達がこの法律のもと新天地を目指して行きます。
当時の西部には、未だ正式に名義の定まっていない広大な国有地があったわけですね。

シェーンがお世話になったスターレット (Starrett) 一家も、その周辺の入植者も皆このホームステッド法のお陰で土地持ちになった人々です。
一方、地元のボスとその一党にとってホームステッド法など糞食らえ・・・勝手に俺らの土地に入ってくるな・・・という訳で脅しと暴力を使った追い出しが始まります。
そんな矢先、シェーンがやって来ます。
争いが徐々にエスカレートする中、ついにライカーは殺し屋ウイルソン (Wilson)を雇いリーダー格のスターレットの殺害を企てるという筋書きでした。
クライマックスとラストシーンはご存知の通りです。
西部開拓者達が残した小屋
この映画の撮影に使用された小屋や町並みなどのセットは、残念ながら火事で焼けてしまい現在は残っていません。
スクリーンを飾ったあの俳優達のその後はどうでしょう?

主役シェーンを演じたアラン・ラッド (Alan Ladd) はその後ヒット作に恵まれず、1964年に50歳の若さでこの世を去っています。アルコールと薬物の過剰摂取が原因とのことです。
映画「シェーン」の監督ジョージ・スティーブンス (George Stevens)が、次の大作「ジャイアント (Giant)」(1956)での主役を依頼したのに断ったというお話は有名ですね。
代わりにジェームス・ディーン (James Dean)が抜擢され世界的な大ヒット映画となり、スティーブンスはこの映画でアカデミー監督賞を受賞しています。
もうひとつ、息子のデイビッド・ラッド (David Ladd)の元妻は、あの70年代のTVシリーズ「チャーリーズ・エンジェルス」の第2シリーズからファラ・フォーセット(Farrah Fawcett)の後釜を演じたシェリル・ラッド (Cheryl Ladd)です。

少年ジョーイ (Joey)役のブランドン・デワイルド (Brandon deWild)は俳優を続けますが、1972年に交通事故で不慮の死を遂げてしまいました。30歳でした。

母親マリアン (Marian)役のジーン・アーサー (Jean Arthur)はシェーンを最後に映画界から引退しました。何と撮影当時で50歳を過ぎていたそうです。見えませんよね。
ブロードウエイの舞台で復帰後、1991年に90歳でこの世を去っています。
晩年、若きメリル・ストリープ (Meryl Streep)をはじめ、多くの名優の演技指導に当たったというお話も有名ですね。

父親ジョー・スターレット (Joe Starret)役のヴァン・ヘフリン(Van Heflin)はその後も渋い脇役として数々の映画に登場しています。
71歳で亡くなる前年に公開された「大空港 (Airport)」(1970)では、機内に爆弾を持ち込む犯人役でした。確か機長をディーン・マーティン (Dean Martin)が演じていました。

最後にあの二丁拳銃の殺し屋ウイルソン (Wilson)役のジャック・パランス (Jack Palance)。
「シティー・スリッカーズ (City Slickers)」(1991)で念願のアカデミー助演男優賞を受賞。
2006年に87歳で生涯を閉じるまで、アクの強い個性的な名俳優として大活躍でした。

つづく

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